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アメリカの写真家リチャード・カーン(1954-)の作品集『Medicated』。カーンは1980年代からニューヨークのアンダーグラウンド・カルチャーを背景に、ヌードやポートレートを通して人間の欲望や衝動を描き出してきた作家です。音楽や映画とも接点を持ちながら、親密さと危うさを併せ持つ視覚表現で注目されてきました。本書は2010年から2018年にかけて制作されたシリーズを収録し、処方薬を服用する女性たちをバスルームや寝室といった私的な空間で撮影しています。薬の存在が日常に浸透する現代社会を背景に、依存と安らぎ、現実と幻想の狭間を浮かび上がらせる写真群は、静けさと緊張を同時に孕み、鑑賞者に深い余韻を残します。リネン装の大型ハードカバーにまとめられた本書は、カーンの近年の関心を鮮明に示すものであり、身体と精神、欲望と制度が交差する現代の肖像として強い印象を与える一冊です。