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日本の写真家・内藤正敏(1938-2025)の写真集『出羽三山』。内藤は1960年代から東北各地の民間信仰や修験道、即身仏を長期的に撮影してきた写真家であり、日本の高度経済成長の陰で急速に失われつつあった「異界」の感覚を、写真によって掬い上げようとしてきました。若くして湯殿山の即身仏に衝撃を受け、実際に羽黒修験の秋峰修行へ参加するなど、単なる記録者ではなく、自ら身体を通して信仰世界へ接近していった点にも、その仕事の大きな特徴があります。『出羽三山』は、羽黒山・月山・湯殿山から成る山岳信仰の霊場を舞台に、山伏たちの祈りや荒々しい自然、闇の奥に潜む死と再生の感覚を、鋭いモノクロームで捉えた代表作です。強烈なストロボ光と深い黒が交錯する画面は、単なる民俗記録を超え、近代化によって忘れ去られつつあった日本人の精神風土そのものを浮かび上がらせます。民俗学・宗教・写真表現が高い次元で結びついた、日本写真史における重要作の一冊です。