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日本の写真家・民俗学者 内藤正敏(1938-)の写真集『身延山・七面山』。内藤は東北の土俗文化や修験道、民間信仰の現場を長年にわたり撮影し、『出羽三山』『遠野物語』など、日本人の精神文化の深層に迫る作品で高く評価されてきました。本作では、日蓮宗総本山・久遠寺を擁する身延山と、古くから女人守護・法華信仰の霊場として知られる七面山を舞台に、巡礼者や修行僧、宿坊、登拝の道程など、信仰がいまなお身体感覚として息づく空間を濃密なモノクロームで捉えています。霧に包まれた山道や闇夜の堂宇、祈りに身を委ねる人々の姿は、単なる宗教記録や風景写真を超え、日本の山岳信仰が持つ畏れや共同体性までも浮かび上がらせます。1970〜80年代、日本の写真表現が都市や消費社会へ向かう一方で、内藤は各地の霊場へ深く入り込み、民俗学と写真を接続させながら、目に見えない信仰の気配を写し出そうとした写真家でした。その姿勢が色濃く結実した代表作の一冊です。