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日本の写真家・沼田元氣(1961-)の『旅する少女の憩 箱根・湯河原編』。写真家、イラストレーター、エッセイストとして活動する沼田は、古い旅館や喫茶店、ローカル線、温泉街など、日本各地に残る郷愁を帯びた風景を独自の視点で記録してきました。なかでも「旅する少女」シリーズは、少女を旅人として配しながら土地の記憶や旅情を描き出した代表的な仕事として知られています。本書の舞台は、近代以降日本を代表する温泉地として発展してきた箱根と湯河原。温泉街の坂道や旅館、駅舎、商店街などを巡りながら、観光案内とは異なる静かな旅の時間が綴られています。写真に写る風景は現実の記録でありながら、どこか夢や記憶の中の情景にも見え、少女の存在が物語性を添えています。華やかな観光地の姿ではなく、土地に積み重ねられた時間や人々の営みに目を向ける視線は、沼田作品に通底する大きな魅力のひとつです。写真集と紀行文学のあいだを行き来するような構成のなかで、旅への憧れと失われゆく風景へのまなざしが静かに浮かび上がる一冊です。